恩田陸 spring
恩田陸のspringを先日読み終えました
私はバレエに全く縁のない生活です
バレエの舞台を通して見たことがないですし、身近にバレエを習っている人もいないため、どこか遠い存在にあります
バレエに関する唯一の記憶は、中学生の時に新聞を読むでもなくパラパラとめくっていた時に、大きな写真で若い〜幼い女性のバレエダンサーが取り上げられていたことです
その写真を見た時に受けた衝撃だけが記憶の引き出しに残っています
どんなポーズだったか、どういう記事であったかは朧げにしか思い出すことができませんでしたが、写真の方の性別に関係なくそのシルエットの美しさに目を奪われていました
その時心に受け止めた、白黒写真から強く伝わってきた鮮やかなきらめきを視覚情報として記憶に残すためにも、平面の写真が押し込まれ揺さぶられた感情の動きを刻み残すためにも、しばらくその写真を見入っていたのを覚えています
昔のことを全くと言っていいほど覚えていないタチですが、その心の感触だけは今でも思い出すことができます
springは、何か小説を読みたいなと思いネットか生成AIかで最近人気の小説を検索してヒットしてランダムに選びました
恩田陸の小説はteenageに夜のピクニック→ドミノと読んで清々しい印象が残っていました
最近恩田陸特集のyoutubeを見て六番目の小夜子と祝祭と予感にトライしましたが、最後まで読まず止まっていました(おそらく小説のせいではなく自分の心の余裕が原因かと思っています)
(以下はspringの内容を少し含んでいます)
springはバレエと、才能をもつ登場人物の話しでした
踊りの技術を身につけること、身近にある自然や動物を踊りとして体現すること、音楽を踊りで表現すること、あるテーマに沿って踊りを創作すること
その全てが才能のベースの上に努力が積み重ねられて達成されるものだと思います
踊りや音楽の才能があったり独自の感性を持つ人が、どのように世界を捉えているのか、どのように周りの世界と触れ合っているか、どのように作品を作り上げるか、どのように絶頂と言える作品を踊り切るに至るのか
私は芸術の分野に全くセンスがないです
恩田陸さんの脳と手を介して彼らの物語に触れて入り込めるその体験こそが小説の魅力です
この小説で私の中で「バレエ」という単語が少し肉付きました
私の記憶の中で一枚の写真に閉じ込められている女性は、ある一瞬を切り取られたものだという当たり前のことを思い知らされます
彼女は、振付家の魂であるテーマを作曲家の作り出した音楽の中で能力の限界を求められる踊りの連続性の中で命を燃やして生きていた
踊りの素養がない私はいかに恩田陸の筆致が踊りの躍動感を伝えようとしていても、受け止める私の受容体がちゃんと機能していませんので、未だ立体的にバレエをイメージすることはできません
それでも二次元の写真の記憶に、時間軸が少し足されて三次元になったような感覚です
私の中では当たり前のように静止していた写真だったものが、LIVE機能で撮られた写真のカーソルを前後させるように、その前後の時間に思いが至るようになりました
一冊の本に没頭させてくれただけでなく、私の中の素敵な思い出を引っ張り出して拡張してくれたことに、心からの感謝の気持ちです